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SUNAOlab. (スナオラボ)の長尾朋貴さんインタビュー
むくりスプーン、けろチェア、かめはめスツール…。
そんなユニークなネーミングを持つプロダクトを発表し続ける、たのしいメーカーさんがいらっしゃいます。
お名前は【スナオラボ】さん。
メーカーさんなのに「たのしい」っていうの、おかしいですか?
いえいえ、本当にたのしそうなのです。
手がけるのは、自然素材の質感を活かしたベビーアイテムや子ども向けのモノづくりワークショップ、子どもがあそぶ空間のオブジェや子ども病院の空間デザインなど。
たのしそうですよね?
そこで、きっと誰よりも“たのしい”の真っ最中にちがいない、
スナオラボ代表兼プロダクトデザイナーの、長尾朋貴さんにお話を伺いしてみました。
プロダクトのこと、デザインのこと、子育てのことも。けっこうたっぷり。
とつぜんですが、今やっていることを。いいでしょう、これ。
― あ、それお箸を自分で削るキットですよね。気になっていました!
「ちょうど今、製品化を進めているんですけど。鉛筆のような形のお箸なのでpencilsと付けました」
ワークショップでも人気の「箸作りキット pencils」。かわいらしい見た目の裏には、子どもの手に馴染みやすくかつ転がりにくいという機能性も!
― かわいいですね! 作る楽しみをのこしておく、というところがいいですよね。あえて全部はやってあげないという。
「これね、初めてキットという形にしました。毎日使うものだし、最後の部分を”自分で作る(仕上げる)”というのがなんかいいなと思って。手づくりって言うと、ひょっとするとハードルが高いものに思われがちなので、できるだけハードルを下げたかったんです。ここまでしてあれば、やってみようかなっていう気になりませんか(笑)」
― なります、なります。この状態で見ただけで、完成のイメージがほぼできてますね。
実際のワークショップの様子。大人でも子どもでも夢中になれるのがモノづくりの魅力。削るだけでその場で完成して持ち帰ることができるのも嬉しい。(画像提供:SUNAOlab.)
「削ったらできあがり、とシンプルにしました。小学校2年生ぐらいの子どもなら削れるんじゃないかな。ぜひ子どもたちに作ってほしいんですよ。道具の使い方を身体で覚えほしい。それにこのお箸は子どたちもにこそ使ってもらいたいんです」
― 鉛筆を持つような感じでお箸を持ってほしい、と。
「そうなんです。鉛筆とお箸って実は持ち方が一緒なんですよね。だから鉛筆を持つ感覚でそのままお箸もきれいに持てるように。だから一般的な鉛筆と同じ太さで、六角形。うちの子もそれまでスプーンだったけど、これですんなりお箸づかいができるようになりました」
無塗装ならではのマットな質感。長尾さんのご家族は、色違いでみんなおそろいで使っているそう。(画像提供:SUNAOlab.)
― 素材の質感そのまんまというのがいいですよね。ツルツルしてないからうどんとかもつかみやすそうです。子どもにとっての難関、うどん。
「竹の質感をのこしたかったから、あえてコーティングはしませんでした」
― なるほど。となると特別なお手入れが必要なのでしょうか
「まあ、洗ったらすぐに拭くとかそれぐらいです。あとは長いこと水に浸けておかないとか、ちょっとしたことですよね。そういうひと手間を惜しまないことって案外大事なんじゃないかなって思います」
大きなものから小さなものへ。ただいま素直にシフト中。
― あの、スナオラボさんで扱うプロダクトは、すべて長尾さんがデザインされているのですか?
「そうですね。というかスナオラボって僕一人なんで(笑)」
― そうなのですね! 長尾さんはもともとは会社務めされていたとのことですが、どうしてお一人でこういった子供向けのプロダクトを作ろうと思われたのでしょう。独立のきっかけというか…
「うーん、僕はデザインの学校に行ってたわけでもなく、建築学科から住宅設備メーカーに入って。やりがいはあったけどそこでどんどん昇進に向かって仕事をし続けることにそれほど魅力を感じなくなってきてたんですよね。と同時に、やりたいことがあるのに、それを本気で始めようとしていない自分は素直じゃないなーと感じていたんです。
― それでスナオになろうと。
「そうです。自分自身、もっと素直になろう、素直な生き方をしよう、と思って付けました。今では、素直になることで自分も周りの人も幸せになれる、そんな気がしています。」
― すとん、と心に残る良い名前ですよね。スナオ、って。
「どうも。で、素直にやりたいことをやろうと思って、家具…そう、家具作りをやろうと。それで独立したんですけど」
― あ、子ども向けの椅子ですね。かめはめスツール!
「あ、そうです。最初はそれでした。まだ独立する前ですけど、幼なじみに依頼されたんですよ。“新しく幼稚園作るからベンチみたいな椅子作ってよ”って。それで休日に近所の木工所の道具を借りて作ったんです」
― お友だちからの依頼とはいえ、いきなり子どもを対象にしたモノを作ることに抵抗とか迷いなどは無かったのですか? それまで住宅設備という割と大きいものを扱っていらしたわけですが…
「それが全然無かったんですよ。むしろ対象や使うイメージに合わせてモノを作ることがこんなに楽しいのか、と気付きました。それに木材という素材は、子どもと相性がいいんだなと改めて思えたというか」
子どもは最高のモニター兼ディレクター(?)
― 自然の素材に触れさせてあげたいですよね、子どもには。そのためには大人が良さを判っていなくちゃいけないのですが。
「うん。なんでしょうね、やっぱり子どもには良い素材を与えなきゃなって思うんですよね。子どもって打ったらちゃんと響くし、感覚に対して正直だから。うちの子なんて(ご飯が)うまく炊けたぞっていうときとイマイチなときの食いつき方が全然違う(笑)」
― ああ、わかります。残酷なほどに正直ですよね、子どもって。
「そうそう。僕も商品開発の段階で、試作品を子どもに渡して反応を見たりするんですけど、これがまあ、正直で(笑)」
― あるんですか? イマイチな反応だったときが。
小さな手、げんこつ握りでも握りやすい太めの持ち手と、食べやすいゆるめのカーブが特徴のむくろスプーン。(画像提供:SUNAOlab.)
「ありますね。これ、↑このスプーンですけど、最初は右利き左利き兼用ってことで一パターンにしようと思ってたんですよ。一つで完結、みたいな方がスッキリしてるし、子どもがこっち使って反対側をお母さんがあーんするときに使ったりするかなと」
― はい。
「それが違ってた。子どもが1歳になってすぐのときに、試しに渡してみたんですよ」
― どうでしたか?
「迷ってました」
― 迷った?
「どう使うのかわかんないみたいで。それを見て一瞬で、これではダメだなと思いました。即改良です」
― わあ、潔いです。
「子どもが使うものは、ほんのちょっとでも迷わせてはダメなんですよね。結果的に右利き用と左利き用を作って、すごく感謝されています。左利きの子を持つお母さんたちに」
― そうですよね、たしかにありがたいですよね。それと、これ、このスプーンは立てて置くこともできるんですね。これは便利です。
「そうなんです。子どもに使いやすいカーブがせっかくなら活かせないかなと。横にしても安定して立つようにカーブの部分をデザインしました。衛生的だし、ひまなときにこう、ゆらゆらと揺らして遊べるっていうのもイイところです(笑)」
口に付ける部分が直接テーブルに付かないためのカーブラインが素敵。(画像提供:SUNAOlab.)
― こういうのを見るとデザインの力ってすごいなあと思います。さりげないけど、すごく大きな作用ですよね。今日実際に触らせていただきましたが、長尾さんのデザインされるプロダクトはどれも、優しい雰囲気と計算された機能性が絶妙な具合で同居しているように感じます。
「あ、それはいつも意識してます。僕そういうの考えるの大好きなんです。デザインと機能性(便利さ)は必ず一対にして考えますね。工学部の建築学科出身だからかな。綺麗な絵を描いたりは苦手なので、その代りというか、もっと違うアプローチ、たとえば合理的に機能的なところから入ってデザインに落とし込むという考え方もあるな、と思ってます」
機能性という概念を形あるものにする、ということ。
― デザインと機能性は両立してあるべきだと思いますか?
「世の中的にどうかは別として、僕はそういう道を選んだわけで。なんだろう、たとえばですけど、美的に長けているものであれば、それがそのまま機能になると思うんですよ」
― 美が機能に?
「はい、それを見て美しいなと癒されるのであれば、癒すという作用が(その人にとっては)機能と言えるんじゃないかなと」
― わかるような気がします、はい。
「まあ僕はもう少し判りやすく純粋に‘使いやすい’、という機能性を形にまとめることで、モノとして成り立たせる、そういう方法を選んでいるってことになります」
こだわりがいっぱい詰まった「きのこのうつわ」は、ほぼ一瞬のひらめきで生まれました
長尾さんの、普段の暮らしを見つめる目線から生まれた「きのこのうつわ」セット。出産祝いにもぴったり。(画像提供:SUNAOlab.)
― こちらの「きのこのうつわ」もそうですよね。この内側のカーブ、これは眺めても美しいし、触っても気持ち良いし、何よりエラいです。ちゃんと役割があって。この反り返りのおかげでスプーンに乗せる量を調節できるところが。
「ありがとうございます。ここはほんとに…時間が掛かってます(笑)。手で一つ一つカーブを付けているんですが、このかえり具合を同じに仕上げるのが職人さんの腕の見せどころです。これこそ人の手が成せる技です」
― サイトで拝見したときから、触れたら気持ちいいんだろうなあと思っていましたが、ほんとにすべすべですね!(触ってます)
「回転させながらきゅーって削っていくんですよ。力の入れ具合がね…、とても繊細なんです。このカーブの入った丸み感、厚み感。これがあるからぽってりとしたきのこらしさも出たと思っています」
― きのことはなかなか…。食器ときのこ、という結びつきがかわいらしいですよね。
「食器って、食べ終わったら重ねてまとめてから片付けるじゃないですか。それを見てたら、ひっくり返して重ねてみたらどうかなって思って」
― それでひっくり返してみたのですか。かぽっと。
「そう、かぽっと(笑)。それで、きのこだ!って」
― おお。
「僕思うんですけど、人がよくすることやよく使っているものには色んなヒントが眠っているんですよ。人が何気なくとる自然な行動の中に、です。たとえば、今傘を持っていたら、なんとなくこのテーブルのはじっこに、こう、引っ掛けますよね。たとえばですけど。そういう何気ない行動、仕草に、あったらいいなのヒントが存在しているんじゃないかと」
― 何気ないですね、たしかに。その、パっとよぎっては一瞬で去ってしまう‘あったらいいな’に気付くかどうか、見逃さないかどうか、ですね。
ベビー用のうつわとしての役目が終わっても飾っておきたくなる洗練されたデザイン。(画像提供:SUNAOlab.)
― これはほんとに、ベビー用だけにしておくのはもったいないですね。ずっと取っておいて、お父さんお母さんも使いたくなります。ぐい呑みとカシューナッツ入れとか‥。
「(笑)。それもいいですね。使い終わってもいつまでも取っておきたくなる、その人の記憶が投影されるようなプロダクトを作り続けたいと思っています」
こんな可愛いうつわだったら、子どもも進んで食べてくれそう!(画像提供:SUNAOlab.)
おもしろくないよりはおもしろい方がいいと思う。
― 今までお話を伺ってきて、長尾さんご自身が普段からよく見ているもの、触れているものを、もう少し良くしたいというところからデザインが生まれるのだなあと感じました。
「ああ、でもそれはほんとにそうです。そういうやり方に、最初は、ほんとにこれでいいのかな? って自信が持てなかったんですけど、思ったよりも皆さんに受けいれてもらえて…」
― 「これでいいんだ。」と。
「そう。ただのおもしろアイテムに思われないかな、と心配だったんですけど、そこが良かったみたいです」
― とっかかりは、なんかおもしろい、で充分じゃないかなと思います。それでちゃんと知ってみたら実はすごく使いやすかった、っていうのがいいですよね。
普段はおうちの形をしたオブジェ。使いたいときにパッと広げて鍋敷きに早変わりの「なべしきハウス」。機能性とデザインに可愛さもプラスして、いつまでも愛着の持てるアイテムに。(画像提供:SUNAOlab.)
見守られたり、見守ったり。かぞくという存在について。
― さて、最後に「かぞく」についてです。nunocotoユーザーさんはお母さんが多いので、旦那さま代表、パパ代表ということでよろしくお願いします。とつぜんですが、奥さまとの間で大切にしているものって何ですか?
「え…。いきなりですね(笑)。うーん‥、あの、僕と嫁さんはずいぶん付き合いが長いんですよ。学生のときからだから…結婚するまでに15年ぐらい知り合いだったかな」
― 15年!!
「そう。でも学生時代という、言ってみれば自分という人間の価値感が形成される時期にいっしょに過ごせた、っていうのは大きいですよね。あ、大切にしていることですよね。うーん、、、」
― (…。)
「あ!ありました、僕が、っていうか嫁さんが、になるのかな。あのね、ありがとう。ってよく言われます」
― ありがとう?
「そう、ちょっとしたことでも、たとえばお茶を持っていっただけでも必ずありがとうって言われます。そうすると、嬉しいから僕もつられて言うようになりますよね」
― いいですね、ありがとう。…いいです。
「僕よりしっかりしてるんですよ、嫁さんの方が。家族のことすごく考えてるし、いざってときには僕を夫として立ててくれたり。感謝してます。だから僕もありがとうだし、そういうことはこれからも、大切にしていきたいなと思います。あ、なんか普通ですね、これ。」
― いえ、シンプルでまっすぐで素敵ですよ。ありがとうございます。お子さまたちに対してはどうでしょうか。つい先日3人目のお子さまが誕生されたばかりとか。おめでとうございます!
「あ、どうも。産まれたてふにゃふにゃです。そうですね、みんなそれぞれ自由に育ってくれればいいと思ってます。あんまりモノづくりという部分にはこだわらないけど…」
― けど?
「やっぱり表現できる人になってほしいとは思っています。生み出せる人。あの、これは、自分の子どもに限ったことじゃないんだけれど、僕がよく思うことで」
― はい。
「今は機械が何でもやってくれる時代になってきてますよね、機械化が進んでいるというか。そうすると、モノづくりっていっても、作る部分をほとんど機械がやってしまい、作る人は不要になるわけで。そうなった場合、じゃあ人としての価値っていったい何だろうって。それって新しいものを「考える」「生み出す」ことだと思うんですよね。そこは人間じゃないとできないことだから。だから子どもたちにはそういう人になってほしいなとは思います」
子どもたちとワイワイやっているのが合ってるんです、たぶん。
― 最後に、これからの活動についてお伺いしたいと思います。
「これからも、こんな感じでベビーや子どもに関わるプロダクトやプロジェクト、ワークショップをやっていくと思います。あ、今地元の福岡で、子どもの教育について考える人たちのネットワークが合って、そのメンバーの一員としてモノづくりをテーマにしたワークショップをやってます。幼児から低学年ぐらいを対象にしてるんですけど。これがなかなか楽しくて」
― その年代は、しかし難しい年代でもありますよね(笑)
「あ、そうそう(笑)。全員を集中させるのがね、コツがいりますけど。でも面白さを伝え続けることは、すごく意味があることだと思ってます。やってみようかな、ってところまで持っていければOKで。始めから全部やってあげるのもなんかちがうし。かと言って逆に自由にやってみて、と言うとできなかったりするから。きっかけをうまく与えてあげられればいいなと
― 楽しそうですね。ぜひ東京でもやってください!
「子どもは、自己表現できて心身ともに丈夫であることが一番」と、シンプルだけど熱い想いを持った長尾さん。Pencilsを持ってニッコリな一枚、いただきました!
これからも、思わずにっこりしてしまいそうな優しくて楽しいプロダクト、期待しています!
「ありがとう。」いい言葉です…。
<インタビュー終わり>
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【SUNAO lab. 】スナオラボ
「”たのしい”と暮らそう。」をコンセプトに、
毎日の暮らしで活躍してくれるデザインプロダクトを発信するブランド
http://sunao-lab.com/
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