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衣類のこれから探究ユニットさんインタビュー
ひょんなきっかけで結成して、活動はまだ数回。つまり未知数。
「0.1秒ぐらいで(何をするのか)ぱっと分かるのがいい」と、ノリで付けた割には結構しっくりきているというユニット名。衣類のこれから探究ユニット。
その“何を”の部分を伺いました。すごく真剣なようで、ゆる〜いようで、そのどちらともいえない、その手前な感じを。
遅かれ早かれ出会うことになってはいたのかな、と。
プロフィール画像。左が福原さん、右が岩崎さん。…そっくり!
衣類のこれから探究ユニットは、岡山市育ちの岩崎恵子さんと玉野市育ちの福原奈々さんの女子2人組で2014年に結成されたばかり。
もちろん活動も二人の地元、岡山が拠点。
衣類の可能性をヨコにもタテにも広げてくれるような、楽しいイベントを企画したり、地元のイベントでミシンを使うワークショップを開催したり。かんたんなリメイクの仕方を提案したり、とすでに色々な活動が。でもまだこれ一部。
お話を伺った福原さんのおうちは、地元で愛される手芸屋さん「コットンショップもめん畑」。
それまでお父さんとお母さんだけでやっていたお店に、3年前に東京から戻った福原さんが加わって、より賑やかに。ワークショップや地元のイベント、など、活動の場はどんどん広がっている。
そして、ここが、衣類のこれから探究ユニットの拠点、になることも。
お酒を飲まない2人は、ときに珈琲を飲みながら、ときに布を触りながら、ああでもないこうでもないと衣類のこれから探究ユニットのこれからについて熱い議論を交わ…すという感じでもない。
熱い議論はあまり交わさない。言わなくてもなんとなくわかる、ということなのだろうか。会うことも少ない。
福原「だいたいメールのやりとりで済むよね」
そうなのだ、お互い自分の仕事を持っているせいか、好きなときにすぐ会えるわけではないそう。何事もメールでさくさく進める。
― なんとなく幼なじみの雰囲気なお2人なのですが、いつごろ出会ったのですか。
福原「わたしがこっち(岡山)帰ってきてからだから、3年前かな」
岩崎「うのずくりっていう、宇野に移住したい人たちの手伝いをする団体があるんですけど、そこ主催のまちづくりイベントで、企画の方が『岩崎さんときっと合う子が今日ここに来てるよ。福原奈々ちゃんって言うんだけど、こんな活動してて…』って教えてくれて。それですぐ、手当たり次第いろんな子に声かけたの。『奈々ちゃんですか?』って」
福原「そんなことしてたんだ(笑)」
岩崎「そうそう。それで最後の片づけのときにやっと当たったんだよね、奈々ちゃんに」
― 実際対面してみて、何か、この子とは合いそうだぞ、みたいな直感がありました?
岩崎「少し話しただけで、興味を持っている方向が同じだなと。あと、なんとなく、こうしたいな~のスタンスが似てるなと思った。力の入れ具合というか。抜き具合というか。だから今(二人で)このペースでやれているんだと思います」
福原「あのとき出会ってなくても、たぶんお互い気にはなってたよね」
さて、気になる活動について。の前に、わたしらのスタンスについて
まずいろんな活動について伺う前に、前提として衣類のこれから探究ユニットの立ち位置を確認。
“[エコ] [リサイクル] [ファッション] [ハンドメイド] などの概念のちょっと手前で活動中。”(サイトより引用)
とのこと。
― ちょっと手前、なんですね。踏み込んでない(笑)
岩崎「そうです。だからがっつりやる!という感じはぜんぜんない。ハンドメイドの‘温もり’とか‘ファンシーさ’っていうのとは違うし、リサイクルみたいな啓蒙的なものも目指してないし」
福原「うん。何ていうか、手づくりだから天然素材じゃなきゃ、とか世界にたった一着の、とかそういうニュアンスは(わたしたちの活動には)無いかな。いや、それはそれで良いと思いますけど。目指してるのはもっと気軽な感じ。こういう服あったらいいよね?うん、いいね!ぐらいの感じ。それがたまたま衣類で、たまたまリメイクだったり」
クール、というのとはまた違う、フラットな目線で、あくまで自分たちがやってみたいことベースで、
次々に斬新な企画を生み出すお2人。
…という感じでもないらしい。
岩崎「わたしたちがやってること、べつに斬新じゃないですよ。なんも新しいことない。たぶん普通にどこかで誰かがやってることだし、やれることだし」
福原「うん、やってるね。黒染めなんか個人でもやれるし、企業としてやってるところもあるし。アパレル業界だと別にめずらしいことじゃない」
― そうなんですか。
岩崎「そう。染工場があればできる。だから別にわたしらじゃなくたっていい。みんなどんどんマネしてやってみたらいいのに~って思います」
― 黒染めやるなら私たちに任せて、みたいなのは無いんですか。
福原「ないない。無いよね?(笑)」
岩崎「ぜんぜん無い。わたしたちだからできること、とか言うつもりもまったくない」
福原「結局はどこで出会うか、だけのはなしで。出会うタイミングがたまたまわたしたちの企画だったりしたら、それはそれでいいな、って」
黒染めの魅力は「あれがこうなるんだ!」の驚きと楽しさ。それに尽きる。
ユニット結成のきっかけとなった、2014年9月の「マチノブンカサイ」。
廃校を会場とした、ライブありワークショップあり屋台ありのお祭りで、衣類のこれから探究ユニットとして活動デビュー。
― ここで実際に黒染めをされたのですか?
岩崎「いえ、ブラックストアということで、地元のリサイクルショップさんから大量に古着を仕入れてあらかじめ黒染めしたものを販売しました。その服の、黒染めする前の写真をくっ付けて」
福原「ビフォーアフターみたいにね。新鮮だね〜と良い反応をもらえました。これはね、いい企画だな、って自分でも思います」
岩崎「黒染めすると当たり前だけどまったく印象が変わるんですよ。これ↑なんか、もとは真っ白でシミもあったブラウスでした。地色だけ染まって糸の部分は染まらないんです。糸ってポリエステルだから。(※コットン・ウールなどの自然素材しか染まらない)」
― おお〜。
岩崎「おもしろいのが、どうみてもオカン服じゃん、っていうデザインでも、黒染めしてみれば、意外と今っぽく見えたり。要は色が派手過ぎた、ってことになりますけど(笑)」
福原「このパンツも黒染めしたやつですよ。もともとチェックだったんですけど、このように真っ黒に。しかもこれお父さんのだから最初だぼだぼで」
岩崎「え、そうだったん?」
福原「そう。でもウールだから、洗ったらぎゅーーって縮んで、ちょうどよくなった。しかも…、」
― まだなんかあるんだ。
福原「この辺こう、虫食いの穴が開いてたんですが。縮んで埋まりました。あと、裏地にも染みがありましたが。おかげさまでいろいろまったく気にならなくなりました(笑)」
― なんとも懐がおっきい! 黒染めの威力発揮ですね…!
福原「良い生地だし、好きな形だからどうにかしたいなあって。フロントのタックも気に入ってるんです」
― お父さんの履き古した(失礼!)パンツが、今こうして福原さんのスタメンワードローブになっている。。。新しい価値が生まれましたね。
福原「帆布のバッグもいけました。帆布ってどうしても服と擦れ合う部分は色が落ちるけど。そこらへんも綺麗に真っ黒。これ、アトリエペネロープさんの帆布バッグです」
岩崎「この企画は、驚きと楽しさが同居していて、しかも得した気分にもなれる。実際、捨てるしかないのかなと諦めかけていた服が、また着れるわけだし。今後も続けていきたい企画の一つですね」
― 黒だけなんですね。
岩崎「はい。他の色もやらないの?ってよく言われるんですけど、黒がいいんです。黒以外の色って、人によってイメージのブレとかがあるじゃないですか。黒にはそれがない。黒って言ったらもう真っ黒だから。」
福原「そうそう。そもそもが、どうせならみんなで持ち寄っていっぺんに染めよう、ってところだから。染め代を折半する形で。だからみんなの色の認識がズレない黒がベストなんです。」
― なるほど。でもそれなら白でもいいのでは?(しつこい)
福原「白くするのはブリーチだから、衣類が傷んじゃいますよね。それはちょっと優しくない。黒ならば、どの色にも重ねられます。染め替えという形が可能なんです」
岩崎「あんまり手間かけたくないんですよ。出したら黒くなって帰ってくる、っていうぐらいの気楽さがいいと思うから。染料とかにこだわってるわけじゃないし。そこじゃないんです、やりたいことは」
STORY MARKETで見えてきたこと
衣類のこれから探究ユニットとしての活動が続いた頃、東京で開催された「エコジャパンカップ2014」のライフスタイル・エコチャレンジ部門で大賞を受賞。
そこで評価されたのが、「STORY MARKET」という新しい形のフリーマーケットだった。
単純にいらなくなった服を売るだけじゃなく、服にまつわるエピソードやストーリーを添えて売る。
ストーリーをモノの付加価値として捉え、さらにエコにつながるコミュニケーションの場としての「STORY MARKET」。
― これ、アイディアとしてすごくいいな〜と思って。実際に開催もされたのですよね。いかがでしたか。
岩崎「正直、構想と現実の間には、まだちょっと工夫が必要だなと感じましたね」
― どんな?
岩崎「告知の仕方もそうだけど、やっぱり商品を集めることとその商品を売ることの難しさというか」
福原「出品してくださる人にとっては、そのモノへの想い入れやストーリーが全てなのですが、やっぱりそれだけじゃなくてある程度のクオリティでないと買う人はお金を払わない、ということでしょうか。簡単に言えば。」
岩崎「あとは、思ったほどたくさんは集まらなかったかなと。ストーリーを語れるものを出してくださいとお願いしたので、何の気なしに出せないし。かと言って本当に大切なモノはものはまだ売りたくない、っていう」
― ああ、それはたしかにそうかもしれませんね。
岩崎「でも、それに気付けたことが収穫ですかね。考え方としては持っていたいけど、手段としてはもう少し練らないといけないなあ。絵空事にならないように、もう少し、自分たちでもしっくりくるところまでもっていきたい」
「それでも背景を伝えることには意味があると思う」
― モノを買う人にとって、ストーリーだけではお金は出せない、ということですが。オンラインではなく目の前で、だと、お金を出してもらうためのハードルが少し上がりますよね。
岩崎「そうですね。でもだからといって、安けりゃいいってことにはしたくないんですよね」
福原「値段は確かに大事だけど、その人それぞれの高い低いの折り合いをつける境目はあるはずですよね。そこを探っていきたい。背景を伝えることには意味があると思うし」
岩崎「STORY MARKETに限らず、何かモノを売るときは、『まーこれは高いだろうな、高いけどしゃーないな。いいものだし』って思わせたものの勝ちだと思ってます。ちゃんと納得させてあげることが大事。そうすれば高くても買ってくれるはず」
得意なことそれぞれ。を生かして
― 岩崎さんは、普段のブランドプランナーとしてのお仕事の際にも、まずコストの部分から切り込むと…。
岩崎「切り込みますね(笑)。コストって結構みなさん苦手意識がある部分なのか、「え、そこから入るんだ?」と驚かれます。独立する前は、sou・souというメーカーで10年近く、商品企画をしてたんですけど。モノと価格については、そこでみっちり叩き込まれましたね」
― それが今のお仕事やユニットの活動に活かされているんですね。
岩崎「デザインもしてますが、基本的にはプランニングやコーディネートが多いから。わたしの場合、こうしたい!というデザインや表現にもっていく、というよりは、この価格帯で売るにはああしてこうして…と逆算で考えていきます」
― そういう方ほんと頼もしいです。
福原「わたしたち2人でやってますが、お互い補てんし合っているのかな、って思います。岩崎さんはアイディアを出したり企画を決めたり皆に広めたり。そういう作業がさっさとできちゃう。わたしはそれを具体的な形にしたり縫うときの指導ができたり、ここの場所を貸したり。職業用ミシンとか必要な道具はそろっているので」
― うまく役割分担ができてますね。
岩崎「そう、わたしなんてミシン使えませんから! だから奈々ちゃんのように、こうしてリアルに店頭でお客さんのオーダーに応えたり服に対する愛着に触れてる人がパートナーだというのは大きいです」
福原「いや〜、わたしの方こそがんばんなきゃって思ってやってますよ~。いわさきさんとやってるし、見放されないようにちゃんとしなきゃな、わたし。って(笑)」
岩崎「なんだそれ(笑)」
照れる2人…
小さくていい。むしろ小さい方がいい。気付きを具現化したい
そろそろお腹が空いてきたので、福原さんちから歩いて3分の行きつけのお店、「大阪屋」さんでお昼ごはん。
ランチ、じゃなくて、お昼ごはんと呼ぶのが似合う、そんな食事処。お店の外にまでこんがりとした香りが漂ってくる。
「どうしようかな~」と迷っていると、
「今日はこれがおすすめかな~」と女将さん。さかな定食600円に決まり。
瀬戸内の新鮮なさかなたち。どれも艶々していて美味しそう!!
ちなみにここから歩いて3分で海。大きな船が毎日行ったり来たり。
福原「あ、今日おっきい玉子入ってる。いつものはうずらの玉子なのに」
岩崎「ほんとだ。あ、あのさ、今思いついたんやけど、やっぱりあれやりたいな、自分の気に入ってる服、もう一着作るの」
福原「うんいいね、やろう」
― いいですね。気に入った服、翌年買い足そうと思ってももう無い、ってことも多いから。それはいいなあ。
岩崎「そうなんですよ。あったらいいですよね? モラル的にはだめなんだろうけど、うちら手前だから。モラルの手前(笑)」
福原「それを売るとかじゃなくてね。あくまで自分のために、で。実際に店頭でもときどき、お客さんから「これと同じのを作ってほしい」って実物を渡されるっていうオーダーあるんですよ」
岩崎「自分でもできるんだ!こんなことできるんだ!っていう気付きをもっと共有したいなっていうその思いが、そもそもこのユニットの結成のきっかけやしね」
― なるほど。
岩崎「この間、奈々ちゃんにコートをリメイクしてもらったんですけど。『コートの襟を外して、ノーカラーコートにしてもらった』ってInstagramで投稿したら、わたしと同世代の友達からたくさん反響があったんです。そんなことできるんだー!?って」
― でしょうね。まさかそんなことができるのかって思いますよね。普通は。
岩崎「そう。別にわたしらにとったら普通だと思ってたんですけど。そうでもないみたい。周りのみんなは選択肢の中にこういうの無かったみたいです」
福原「これまでも、これからも、そういうのを一つ一つ具現化していきたいと思っているんです。
衣類に関する気付き、みたいなもの。小さいかもしれないけど、あったら「うわ~これすごくいい!」って思えるもの」
2人のこれからが楽しみということは、衣類のこれからがどんどん楽しいものになっていくことかもしれない、とも思う。
「今まで流れに身を任せてきたらいつのまにかこうなってた」と話す岩崎さん。
これからは(衣類のこれから探求ユニットとして)衣類の新しい流れを作り出すことになりますね。と言ったら、
「いやいやぜんぜん。そんなすごいことまったく考えてない」って。
また否定された(笑)
<インタビュー終わり>
<からのおまけ>
美味しいお昼ご飯で満腹になったあとは、ご近所を歩いて散歩。海の香りがする街を。
これぞ買い食い。これぞ青春の1ページ。な光景に出会う。確実に美味しそう。
宇野駅と駅前のオブジェ。
直島や小豆島行きのフェリーが頻繁に発着する。
福原「わたしが10代の頃、フェリーに乗って直島でデートするのが流行ってましたね。ちょうどアート関連で賑わい始めたころだったから」
直島もそうだけど、岡山だって負けてない。
先述のうのずくりもしかり、クリエーターやアーティストの移住が増えるにしたがって、まちづくり系のイベントも賑わいつつある。
なぜ岡山なのだろう?なぜ宇野?
福原「う〜ん、たまたま海沿いに空いてる物件があったからじゃないかな(笑)。瀬戸内自体が盛り上がってるから。岡山に限って言えば、移住される方も多いけど昔からの繊維や布関連の企業さんは多くて、繊維工場もたくさんある。地場産業として根付いてるからか、関わってる人は多いです」
― 味方が多いということですね。
岩崎「そう。だから、こういう企画をやってみたいと思ったときに『あの人に頼んでみよう!』ってすぐに顔が思い浮かぶし。岡山という場所には、その点での機動力の大きさもあると思います」
ちなみに、インタビューのときも店先のベンチでもお昼ご飯のときも、
2人の座る位置がイラストアイコンと同じだったことは偶然なのだろうか。今度聞いてみたい。
【衣類のこれから探求ユニット】
手芸店を家族で営む福原と、衣類のプランナーの岩崎が、「惜服・分服・植服」の幸服三説をモットーに2014年結成。[エコ][リサイクル][ファッション][ハンドメイド]などの概念のちょっと手前で活動。
http://iruinokorekara-okayama.tumblr.com/