
慌ただしい師走には、一口で別世界へ行けるお菓子を選ぶ。
やってきました、12月!
お歳暮リストをチェックしつつ、子どもたちの大イベントクリスマスの準備、
大掃除に年賀状にと新年を迎える支度まで、息つく暇もないくらい。
お疲れの皆さま、甘いもの、お一ついかがですか?
まずは、白金堂の「兎ケーキ」と「季節のガトー・安納芋」をご紹介。
実は、白金堂で、まず目に飛び込んできたのは、パッケージだった。
どこか日本を感じさせる不思議な動物たちに一瞬でノックアウトされてしまったのだ。
お菓子はと言えば、いずれも控えめながら愛らしい姿をしている。
それを口に運ぶと、あっ! と思う。おいしい。

共通しているのは、どのお店でも作られているようなお菓子なのに、
普通とは違う、育ちの良さを感じさせるところ。
ふっくらしていて、中身はぎゅっと詰まっており、
卵やチョコレートやお芋の味が、口の中にしっかりと広がる。
きちんと選ばれた材料で、優しく大事に作られたのかなーなんて想像してしまう。
小さな子のいるおうちにも、年配の方にも、安心してお贈りできそうな味だ。
それもそのはず、白金堂が目指しているのは、「『洋菓子の原点』に帰り、
職人が手間を惜しまず繊細な技にこだわった『日本の洋菓子』づくり」なのだそう。
その心意気に、深々うなずく。東京土産にも一押しのお菓子である。
次はHENRI LE ROUX(アンリ・ルルー)のプティ・ノエル・キャラメル。
5つのキャラメルが入っている星形のオーナメントが華やかで、
この時季のプチギフトに断然おすすめのお菓子。
オーナメントはブルーのほか、ルージュ・オランジュ・オール・ヴェールの4色がある上、
中に入っているキャラメルも違っているので、選ぶのが本当に難しい。
ちなみに、ブルーの中身は、定番のC.B.S(塩バターキャラメル)、フランボワーズ、
オランジュ・ジャンジャンブル、タタン、カシス。
私にとってキャラメルは、ちょっと難しい位置にいる。
「キャラメル」という響きは好きで、紙箱に入った佇まいもいいと思う。
でも、いつ食べていいか分からないし(おやつには物足りず、
口寂しいときに食べたら食べたで止め時が分からない)、歯につく。
あまり気にはならないけれど、なんとなく不健康なイメージさえある。
そういう訳で、普段あまり口にしないのだ。
でも、アンリ・ルルーのキャラメルは、別。
デザートやお茶の時間に出てくるという夢のようなシチュエーションを思い浮かべられる。
そして、その時、2・3粒好きな味を選んでいいと言われたら、
きっとものすごく興奮してしまうと思う。
「指にはつくが、歯にはつかない」とされている圧倒的な柔らかさ、
食べたい味を間違えずに選ばなければならないという緊張感、
そして甘酸っぱかったり濃厚だったりじゅわーんと溢れてくる素材の味に、
いつもいつも完敗なのだ。
キラキラと美しい、宝石のようなキャラメル。
簡単に現実逃避できて、さあ頑張ろうと思えるお菓子である。
それから、鼓月の「ブッシュ・ド・ノエル」。
そう、老舗和菓子やさんの作った、珍しい和のブッシュ・ド・ノエルだ。
小ぶりでなんともかわいらしい。
お店の方にどんなお菓子なのかと質問すると、
丸太は白小豆とそぼろ餡、雪は軽羹、柊はこなし(生菓子に欠かせない素材の一つ)で
作られていると教えてくださった。
少し洋菓子風になっているのかと思ったのに、生粋の和菓子である。
しっとりとした食感、菓子切がすーっと通る滑らかさ、あんこのほんのりとした甘さ、
それから粒あんのぷちぷちの組み合わせがにぎやかで、クリスマスらしい。
でも、全体に淡泊なので、いくらでも食べられてしまう。
その上、なんと常温で30日という日持ちの良さ!
何かのついでに買っておいても、贈りものとしても、
食べる人を急かさない懐の深さが、この12月にはピッタリだと思うのだ。
忙しいときこそ、お茶を一杯。そこに甘いものがあればなお良し、である。
さてさて、今年の春から、私の甘いものへのほとばしる想いを受け止めてくださり、
ありがとうございました。
穏やかで温かな年の瀬となりますように。
それでは今月も、皆さま、どうぞ召し上がれ。
【今回ご紹介したお店】
・白金堂 http://www.shirokanedo.jp/index.html
・HENRI LE ROUX http://www.henri-leroux.com/
・鼓月 https://www.kogetsu.com/