自然に近い滋味のあるお菓子で、秋に浸る。
楓に桜、柿に欅にいろは紅葉。
小春日和に、草木の深い色づきやかさこそと軽やかな音を楽しむのは、秋の醍醐味の一つ。
外を歩くもよし、窓から眺めるもよし。
夏の後にすぐ冬が来てしまうような最近の気候だからこそ、
短い、けれど、「実り」の季節である秋をしっかりと味わっておきたい。
今月ご紹介するのは、明るく静かな秋にしみじみといただきたいお菓子。
1つ目は、foodmood(フードムード)の「ピーナツバタークッキー」だ。
ホームページに「ごはんのようなおやつのみせ」とあるように、
foodmoodは、乳製品を使わず、菜種油などナチュラルな素材で作った、体にやさしいお菓子のお店。
店主のなかしましほさんのお料理の本も、大人気だ。
そんなお店の定番であるピーナツバタークッキーは、
ぽってりとした厚焼きの雰囲気が愛らしいのに、味も香りもしっかり濃厚。
また、ピーナツバターのイメージから、ザクザクアメリカンなクッキーかと思いきや、
意外なほどほろほろと柔らかく崩れる。
それは、バターと言っても、実際はピーナツを引いたペーストで作られているからだそう。
力強いピーナツの香りに誘われるように、つい手が伸びてしまう。
乳製品を使わないとか体にいいとか、そんなフレーズに胡散臭さを覚える人もいるけれど、
食べさせてしまえばこっちのもの、たいていは、
「体にいいものだけでこんなにおいしいなんて、すごい!」と相好を崩す。
やさしいお菓子は、時に人の先入観を打ち破るほどのパワーを持っているのである。
11月中頃には、十六団子が控えている。
十六団子は、山と里とを行き来する神さまのためにお供えされるおだんご。
山の神さまは、3月16日に山から種を持って降りてきて田の神さまになり、
秋の収穫の済んだ11月(もしくは10月)16日に再び山に帰るという古い伝承が、
日本のあちこちにある。その神さまのためにお供えされ、行事食として家族でも食べるのが、
16個のおだんご― 十六団子だ。
というわけで、なんとなくその日には、おだんごを食べたくなってしまう私。
こんな日には、由緒正しく、羽二重団子の「焼団子」と「餡団子」をいただこう。
根岸、芋坂、羽二重団子。羽二重団子は、『吾輩は猫である』や『坂の上の雲』など、
数多くの文学作品に登場する、江戸時代から続く名店である。
レトロパッケージ好きにはたまらない包装紙をそっと開くと、
平べったい、ちょっと珍しい丸さのおだんごが顔をのぞかせる。
この形、神さま用のまあるいおだんごと庶民のものを区別するためとも言われる。
焼団子のつやつやのお醤油に、餡団子の上品なこしあんがうれしい。
口に運ぶと、シコシコキュッキュと、かなりの噛み応え。
ボリュームもあって、しっかりとおなかに溜まる。
「羽二重」という冠から、ついむっちりとした羽二重餅を想像してしまうけれど、
なんといっても、羽二重団子は江戸生まれ。
粘りに歯応え腹持ちの、江戸っ子の好んだおだんごを楽しみたい。
ちなみに、焼団子は日本酒に合うことでも知られているので、ご興味のある方はぜひお試しあれ。
最後は、テオブロマの動物タブレットから「レフィグ」。
愛くるしいビジュアルにノックアウトされる人連発というシリーズだ。
たとえばウサギは「オーレ」(ミルクチョコレート)、
ネコは「カフェ」(珈琲豆入りミルクチョコレート)、
サルは「サレ」(塩入りビターチョコレート)など、
10種類以上のパッケージと味が用意されている。
年配の方に喜ばれるのが箱裏の小さな窓で、中身がどんなチョコレートが一目瞭然、
チョコは好きだけどカタカナは面倒なんてときに重宝なのだとか。
個人的には文庫本のような佇まいもとても好き。
ちなみに、動物のイラストは、本の表紙などでもおなじみの樋上公実子さんによるもので、
そんなことにもじんわりとツボを刺激されてしまう。
さて肝心のチョコレート、日本のみならず世界でもトップレベルと言われる
テオブロマだけあって、ミルク感あふれるとろりーんとしたチョコレートと、
惜しげもなくちりばめられたフィグの組み合わせにとろけること間違いなし。
特に、無花果のプチプチがたまらない。
このタブレットシリーズ、無花果だけでなく、ナッツもドライフルーツも珈琲豆も、
たっぷり入っているのがとても贅沢。
チョコレートとプラスアルファを、一緒に食べる喜びに満たされる。
実りの秋、枯れていく冬に向けて、私なりに季節の一区切り。
あちらこちらへの感謝の心を持って、穏やかに、滋味のあるお菓子をいただきたいと思う。
あー、今日も幸せ。
皆さま、どうぞ召し上がれ。
【今回ご紹介したお店】
・foodmood http://foodmood.jp/
・羽二重団子 http://www.habutae.jp/
・テオブロマ http://www.theobroma.co.jp/