草花にお菓子に、繊細な秋を見つける。
夏休みが終わりほっと一息……。
あれよあれよという間に、朝夕の涼しさが際立ってくれば
「ハスキーなおふくろ」の季節がやってくる。
ハスキーなおふくろとは、 実は秋の七草の覚え方の一つ。
「ハ」はハギ、「ス」はススキ、「キ」はキキョウ、「ナ」はナデシコ、
「オ」はオミナエシ、「フ」はフジバカマ、「ク」はクズを指す(「ロ」はおまけ)。
秋が深まるにつれて徐々に開いていくはかなげな草花を愛でつつ、
今日の一口にも小さな秋を見つけたい。
さて今回は、京都は仙太郎の「ご存じ最中」から。
ご存じ最中の一番の特徴は、もなか皮からあふれそうなあんこの量!
もなかなのに、手に持つとずっしり重みがある。
口元にもなかを運べば、皮の香ばしい匂いもふんわり。
あんこはかなりしっかり粒が残っているタイプで、
あー、あんこってお豆だったなあといつも感心してしまう。
もぐもぐもぐと休まず食べ続けてお茶を一口飲んで、
今度は、あー、おいしかったなあとしみじみ。
何も変わったところのない、普通のもなかなのだけれど、
直球をズバーンと投げられたような真っ直ぐなおいしさは、やっぱり強い。
私の母など、仙太郎の出店している伊勢丹新宿本店で別のお菓子を買うと、
それがどんなにおいしくても「やっぱり仙太郎でもなか買えばよかったな」と
必ずつぶやく。もはや中毒である。
ちなみに、皮の壊れやすい「ご存じ最中」は地方発送できないとのこと、
遠方のどなたかへの贈りものには、自分であんこを詰める
「お好きに召しませご存じ最中」がちゃーんと用意されている。
そちらをお送りするときには、あんこと一緒にバニラアイスを挟めば、
とびっきりのアイスもなかのできあがり!ということも、伝えておきたい。
続いては、愛らしい見た目の「pure coco」。
このお菓子、一見ほろっとしたスノーボールクッキーに見えるけれど、
かじってみると、なんと中は空洞。
ピュアココは、シュー生地にホワイトチョコレートをかけたお菓子だ。
しかも、まあるく愛らしい見た目に引っ張られて、
甘くて素朴なお菓子を想像していたのに、
ホワイトチョコレートは濃厚で、シュー生地はしっかりしょっぱい。
意外なほどガツンとしていることに2度びっくり。
チョコレートの口どけも、表面のパウダーシュガーのふんわりした甘さもよく、
ついつい次に手が伸びてしまう。
大きめのカップにミルクティーを淹れて、雑誌でもめくりながら食べたい。
50個入りをどーんと差し入れて、人々を驚かせたい。
野望膨らむお菓子である。
ところで、あまり知られていないことだけれど、
私は甘いもの好きでありながら、お酒も好きなのである。
ただし残念なことにほとんど飲めないので、心のみ辛党という感じ。
それでも、カラッと晴れた日にはランチビールが恋しくなるし、
秋の夜長や寒い冬にはホットワインを飲みたくなる。日本酒も大好き。
というわけで、なんだか肌寒い日にいいなと思うのが
福光屋の「酒かすマドレーヌ」。
アルコール分が含まれた「酒かすていら」と違い、
マドレーヌは子どもでも食べられるお菓子であるはずなのに、
袋を開けた途端、酒粕の匂いがぷ~ん!
それはそれは、一瞬カステラと間違えたかと思うほどの馥郁たる香りだ。
しっとり、ふわふわ。なんだかちょっと色っぽい。
みりんを使ったグラノーラもとってもおいしくて、
袋からそのままポリポリ食べてしまう。
ほんのり甘くて、甘酒風味。
小分けにして持てば、息子の緊急事態(おなか空いた号泣攻撃)にも使える。
何より「酒蔵のこぼれ梅」というネーミングが素敵。
みりんの搾りかすが、梅の花に形が似ていることから付けられた名前だそう。
いつか、本物を見てみたいなあと思いつつ、またポリポリ。
ぱりっとしたもなかの皮、ホワイトチョコレートのやさしい口どけ、
お酒の香るしっとりしたマドレーヌ― そんなところに、秋を感じる私です。
花も団子も、楽しんでゆきましょう。
皆さま、どうぞ召し上がれ。
【今回ご紹介したお店】
・仙太郎 http://www.sentaro.co.jp/
・pure coco http://shop.purecoco.jp/
・福光屋 http://www.fukumitsuya.co.jp/