
vol.1『きいろいことり』
このあの文庫が、とっておきの絵本を一冊ずつ紹介します。
赤ちゃんとの毎日に寄り添うような、あるだけで心がほっとするような絵本たちを、いつでも手に取れるところに置いてみませんか。
vol.1 きいろい ことり

― きいろい ことりが おりました。
そんなに ちいさくも ありません。
そんなに おおきくも ありません。
あかい くちばしで うたいます。 ―
絵本『きいろい ことり』は、こんな風にはじまります。
声に出しても耳に届いても心地よく、無駄のない言葉のリズムとはこういうこと。
あかいくちばしのきいろいことりが楽しそうにうたう様子が、一瞬で頭の中いっぱいに広がります。

いぬ、にわとり、うし、ぶた…と、次々に出てくる動物たち。
ちょうど、人間とはちがう、動物というものを認識しはじめる、1歳ぐらいのお子さんにぴったりです。
うさこちゃんシリーズのディック・ブルーナの描く、力強くて親しみのあるキャラクターとそのシンプルなフォルムが、とて愛らしくて。
読んで聞かせるときには、いっしょに指さしながら「あ、いぬさんだねー」「これはなーんだ?」などと楽しんでみてくださいね。
そして、ポンポンとリズミカルに読み進められるのは、シンプルだけどこれ以上ないほどに的確な文章のおかげ。
特に、翻訳者の石井桃子さんの言葉選びの際立ったセンスを感じられるのが、
「ね いぬさん」のフレーズです。

この、たった一言の「ね」が、ちいさなことりのワクワクする好奇心を表現してくれると同時に、読む人に軽やかさや楽しさも感じさせてくれるんです。
読み終わったあとも「ね おかあさん」、「ね ねこさん」と思わず口に出してしまうかも♪
初めての絵本としてもオススメの、可愛くて楽しい一冊です。
-刺繍で描く、『きいろい ことり』の世界-
ぷくぷくと 愛らしいことりと、その仲間たち。
きらきらいっぱいの今日に みんなで せーの、「おはよう!」
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『きいろい ことり』(福音館書店)
ディック・ブルーナ/文・絵 いしいももこ/訳
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