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星野道夫さんのことば
週末は松屋銀座さんの星野道夫展に行ってきました。今年は星野さんが亡くなって20年目の年ということで、8月からの東京を皮切りに、全国巡回写真展が行われています。(本日まで)
あの有名な、シロクマの親子が寄り添う写真やザトウクジラのジャンプ。カリブーの群れの空撮。ゴマアザラシの赤ちゃん。どれもダイナミックで可愛くて、愛情に満ちた写真でした。一緒に行った友人は展示を見終えてから「星野さんって詳しくは知らなかったけれど、(写真見てたら)何度も泣きそうになった」と話していました。
アラスカの自然や動物、人々を撮り続けた写真家であり、文筆家、探検家とさまざまな肩書きを持つ星野さん。ただ、そのいずれの前に、そもそも存在自体が人を惹きつける不思議な魅力を持った方だと思います。
亡くなって20年が過ぎても、変わらずに私たちが惹かれるのはなぜでしょう。
個人的には、星野さんの写真よりも柔らかく語られることばに惹かれます。リアリティに満ちた判りやすいことばから受け取るものは大きく、読み手に想像を委ねてくれる感じがとても好きです。
旅をするときに持っていきたい本、の定番
旅にはフィルムカメラだ!と勢いで買ったのも、この本の影響‥。
ときどき雑誌の特集などで見かける、「旅に持っていきたい本は?」という質問で、たいていそのうちの一冊に挙げらているのが、この『旅をする木』(文集文庫)。私もきっとこれを挙げてしまうだろうなあと思います。感覚が高まる旅には最高の友達ですね。
私がこの本に出会ったのは、出産後、しばらくしてから。意思疎通ができない赤ちゃん(息子です)とベッタリで過ごす毎日に悶々としていたころ。たまたま見たドキュメンタリー映画で星野道夫さんのことを知って、それからすぐにこの本を手に入れました。
育児本でもないし、心が穏やかになれる、というのはちょっと違っているのですが、ただ、アラスカの圧倒的な自然とそこに生きる人たちのことを知ることが、不思議と遠く離れた日本にいる自分をラクにしてくれました。
それから、星野さんのことばの行間からアラスカを想像するだけでなく、自分が過去訪れた地や出会った人に想いを馳せることを意識的にしてみたら、これがなかなか楽しいものでした。
今までの旅先の記憶を引っ張り出したり、テレビで見た映像、写真、なんでもいいんです。
あそこにいたあの人、今ごろ何してるのかな。あそこでは今も夕陽が海に落ちているころかな、とか。それだけで嬉しい気持ちになれました。
最近は忘れがちなので、またやってみようかなと思います。
旅に連れていきたい本たち。昔の紀行文は当時の時代背景もわかって楽しいですね