第八回:毎日使う、たからもの
こんにちは、FU-KOこと美濃羽まゆみです。
我が家の吹き抜けから差し込む光も、
次第に春めいてきました。
まもなく3月、別れと出会いの季節。
道すがら、毎日少しずつ膨らんでいくつぼみを見て、
心弾みつつ、何だかすこし切なくなります。
さて、今回で8回目となるnunocotoさんでのコラムでは、
我が家にある、まいにち使う古いもの、
気に入っている品々をご紹介したいと思います。
これが我が家の時計。
6年前に今の町家に引っ越す前から主人の家にあったもの。
古い柱時計ですが、実は壊れていてもう動きません。
だからもうひとつちゃんと時計があります。
でもこれも思い出が沢山詰まっていて、手放せず・・・
長女が産まれた時間にあわせ、オブジェとして飾っています。
時々これを見て「早く帰らんと!」と焦るお客様が多いので
考えもんかもしれへんけど・・・(笑)
昔の人は毎日ねじを回して、時計と過ごす日々を大事にしていたのだな、
と思いを馳せます。
次はおだいどこへ。
富井貴志さんの木のうつわ、
高塚和則さんの桜のパン皿も、食卓に登場しない日は無いほどの活躍ぶり。
富井さんのお皿は最初、香川県の「とうもん」さんというお店で2枚買ったのですが、
あまりに大活躍なので問い合わせて色違いでもう2枚買い足しました。
高価な買い物なので勇気が要ったけど、
手にとるとその存在感や丁寧な仕事ぶりに、
それだけの、いやそれ以上の価値があるなあと納得。
富井さんはわたしと主人のルーツ、岐阜県で作家活動をスタートされたとか。
それも何かのご縁なのでしょうね。
高塚さんのうつわは神楽坂のjokogumo(よこぐも)さんで。
木のうつわは一見お手入れが難しいイメージですが、
よく乾かすことさえ守ればすごく手軽に使える食器です。
前は一晩乾かして翌朝水屋に仕舞っていましたが、
湿気の強い季節にまだ水気が残っていたのか、黒ずみが出てきてしまい。
今はこうしてオープンな食器棚で収納。
洗ったらすぐ立てかけて風にあてます。
お気に入りは出しっぱなしでも邪魔にならへんな、と思います。
かさかさが気になったら時々オリーブオイルでお手入れ。
これから10年、20年と使って、どんな表情に育っていくのか楽しみです。
おなじく食器から。
ドイツのHeise Keramikのシリーズは、
柄ちがい、サイズちがいでお気に入りをそろえています。
使い始めてもう10年近くになるかなあ。
何より頑丈で、手書きのあたたかみがあって。
流行り廃りの無いデザインやけど、どこか新しい。
定番のアイテムなので家族が増えたら買い足せます。
意外と和食との相性もいいみたい。
小さな蒸篭は、主人が昔友人から譲り受けたと言っていました。
ずっと使い方がいまいちピンと来なくて、仕舞いこんでいたけど、
最近になってこれが大活躍。
シュウマイ、餃子はもちろん、蒸し野菜やご飯のあたためなおしまで。
何より食卓にそのまま出せて、湯気もごちそうになるのがいいですね。
あまりに大活躍なので、大きなサイズを買い足そうか検討中です。
10年前結婚したとき、たんすはもちろん着物や家電はまったく用意せず、
これが唯一の嫁入り道具、グローバルの包丁です。
当時働いていた会社で取り扱っていたものですが、
色々試して文化でなく、牛刀にしました。
ステンレスの一体成型で清潔感があり、お手入れも時々シャープナーをあてる程度。
重心がうまく考えられているからでしょうか、ずっと千切りを続けていても疲れにくい気がします。
毎日使うたびに、これにしてよかったなあ~、とちょっぴりむふふとなるのです。
他にもおだいどこには大好きな道具たちが。
だいどこの道具は、
よく使うものやし、まいにちの料理に使うもの。
料理はやがて、家族みんなのいのちになるもの。
だから、すこしでも楽しく、美味しく、心地よくなればええなあ。
そんな気持ちで道具も選んでいるかもしれません。
身の回りのものにうつります。
Traditional Weatherwearのコートは、10年以上のおつきあい。
さすがに袖のところがほつれてきて、自分で手直ししながら着続けています。
学生のときイギリスに行って、じめっとして鬱々とした天気が続き辟易したもの。
そんなイギリスの人が作るコートは頑丈で温かに違いない!
と思ったものです(笑)
そんなわけで、イギリス製のコートにはなんだか信頼を置いてしまいます。
当時高価な買い物やったけど、ウールのキルティングで温かく、
少しコンパクトなシルエットが好き。
最近ダウンのコートを買い足したのですこし出番は少なくなりましたが、
まだまだ活躍しそう。
くったり、足になじむサボは、ビルケンのレザーボストン。
こちらも、我が家に来て10年近く。
かさつきや傷が目立てばクリームで手入れして、年中活躍しています。
冬場は冷えとり靴下を何枚も重ね履きしていることが多いので、
郵便局に出かけたり、近くのお買い物だったり。
保育園のお迎えもそのまま履いてさっと出かけられるのが、サボのいいところ。
冷えとりはそのときの気分でやったりやらなかったりですが、
続けて取り組むと気持ちが落ち着いてくるので、
サボ生活はこれからも続きそう。
そこで最近はdanskoのサボも仲間入り。
ちょこっと遠くへのお出かけもOKなシックさ。
この子が来てくれたので、
コルクがはがれてきたビルケンは、この春しばらく入院させようと思っています。
ビルケンは代理店で修理やパーツの交換が可能。
思い出のつまったお気に入りを、ずっと長く使い続けることのできる安心感は、
何ものにも代えがたいものがあります。
次はインテリアについて。
我が家には藤の家具が沢山あります。
もともと主人が好きで独身時代から集めていたものだったり、
わたしが実家で使い続けていたものや、親戚から受け継いだものなど。
どれも小さめのチェストや収納棚などですが、
軽くて模様替えも楽だし、お手入れもさっと拭くだけ。
時間が経つにつれ味わい深くなっていくさまも好き。
買えば高価なものですが、その値段以上に長く愛せる品だと思います。
チューリップの彫刻が渋可愛い鏡は、
わたしの出産祝いに、親戚から頂いたものと聞いています。
だからわたしと同い年、34歳(笑)
今探してもこんなデザインなかなか無いだろうな。
以前住んでいた洋風の家ではなんだかしっくり来なかったけど、
今の町家に来るとなんだか息をふきかえしたよう。
不思議です。
竹やあけび、藤やまたたび。
天然素材で編んだ繊細なかご類も、しまいこまずに普段使いに。
洗濯物を入れるかごも、プラスチックのものでは味気ないけど、
藤の優美なかごなら、洗濯物をたたんで干す、その仕事自体がちょっと楽しくなる。
何より、かごのある、その風景が好きなんやなあ。
最後に、裁縫道具。
はさみです。
以前ご紹介した糸切り、裁ちばさみとは別に、二つのはさみを使っています。
左は、インドの古いアイアン鋏。
右は、最近一目ぼれして買ったtajikaの銅はさみ。
アイアンのものはずばずばとよく切れるので、
紐やテープなどをカットするために。
tajikaのものは小回りがきき、なんでもよく切れるので、
縫製中に縫い代をカットするときに使っています。
気に入ったものと長く仕事をしていると、
次第に同僚のような絆が生まれてきて。
仕事終わりには「おつかれさま」と心の中で声をかけます。
物の持つ力に支えられているなあ、と自然に思える。
感謝ですね。
他の人から見れば、古ぼけていたり、
価値を見出せなかったりするのかもしれない。
時には「えいや!」と覚悟を決めて購入したり、
ご縁あって我が家にやってきたものだったり、由来は様々ですが、
わたしにとってはどれも大事なたからもの。
よく主人と「家には泥棒に盗られるものなんてないね!」
と冗談めかして言ったりしているのですが、
貴金属やブランド物など絶対的な価値のあるたからものが沢山あるより、
毎日使ってそのよさを実感していくものこそ、たからものだという気がします。
こうやって改めて集めてみると、
どれも作る人の人柄や思いが見えるような、
手の込んだ品に惹かれるんやなあ、と気づきました。
私の作る洋服や作品たちも、そんなふうに、使う人の生活に寄り添えたら。
一緒に思い出を作っていけたらいいなと願っています。