nunocoto fabricをデザインした人、青山佳世さんへインタビュー

nunocoto interview

「北欧、スウェーデンの地で自然と共に暮らした数年間が、自分のデザインの根っこになっているんだと思います」
と話す青山佳世さん。
「大学とアパートメントの間にちいさな森があって…。
学校の帰りにキノコ狩りしたり。それが全然特別なことじゃないんですよね。
普通なんです。普通に、気軽に、『これから森いこっか』みたいな。楽しかったな〜」
スウェーデンの思い出を話すときの青山さんは、もう本当に楽しそう!
そんな青山さんに、nunocoto fabricやデザインについて、おひさまの下でお話を伺いましたよ。


植物と幾何学模様は似ているな、って思います。
- 青山さんが初めてスウェーデンを訪れたことが、その後のデザインへの考え方に大きく影響し、
また、テキスタイルデザインの道へ進むターニングポイントとなっているとのことでした。
そもそも大学でスウェーデン語を専攻された、そのきっかけは何だったのでしょうか。
もともとスウェーデンにそんなに強い思い入れがあったわけではないのですが、外国語の大学で、
じゃあ自分は何語を勉強したいのかっていうときに、どうせならあまり人がやらない言語がいいな、とは思っていました。
ちょうどその頃、IKEAが日本にやってきたこともあって、何となく自分の中でも北欧、スウェーデンという国が気になり出して…。
どうしても行ってみたくなって、それで大学を一年間休学して、スウェーデンに行きました。
- 行ってみてどうでしたか。
なんて言うんでしょう、フィーリングがすごく合ってる気がしました。
適度な湿度、自然、暮らしている人たち…。
卒業後に再びスウェーデンを訪れて、数年間暮らすことになったわけですけど、ずっと住んでいて、‘やだな’、って思う事がひとつも無い。
快適でした、ほんとに。
ー ひとつもですか! すごいです、それは…。
無かったですね。 ただ、やっぱりちょっと大変だったのは冬の長さ。
すごく長いんです。外も寒くて、冬は日照時間が短いので暗い。
でもだからこそ少しでも家の中を明るくしよう、という気持ちがみんなあります。
たとえばカーテンなんか大抵みんな派手でしたね。
50年代のテキスタイルを使ったり、色が元気のでる感じ、ソファカバー、ベッドリネン、手づくりも多かったですよ。
生地だけじゃなくて壁紙もすごく可愛いくて。花柄とかチェック柄、クラシックなストライプ。うん、花柄は多かったです。
日本だとそういうのは無地が多いですよね。あまり自由に変えられないイメージがあります。
- 日本だと賃貸住宅の条件も厳しいですし、なかなか壁紙までは自由に変えられないですよね。
そうですよね。
- スウェーデンに行く前からテキスタイルデザインをしよう、と思っていらっしゃったのですか。
私、もともと絵を描いていたんです。(デザインはあまり得意ではなく…すみません)
でも、それをもっと何かに活かせればいいなと思って。グラフィックデザインも平行して勉強していました。
パソコンを使って広告とかポスターを作ったり。でもやっぱり絵の方が好きで。鉛筆で塗りつぶしている瞬間が好きなんです。
- もしかして小学生のときとか、授業中に教科書のすみっこにめちゃくちゃ凝った落書きしていたタイプですか?
はい、完璧にそのタイプです(笑)。テストの裏面とか、全面に絵描いちゃってましたね。
interview_02
- なるほど!そこが青山さんのルーツなのですね。
それでスウェーデンの大学で改めてデザインを学ばれていますが、そこで初めてテキスタイルデザインと出会ったということですか。
そうです。そこで柄を作る授業を受けて、リピートの表現の仕方なんかを勉強するうちに、
テキスタイルだったら自分の描いた絵がそのままデザインになるんだ、と。これだ!と思いました。
- 1枚の絵と違って、テキスタイルでは「リピート」は一番重要だと聞いたことがあります。
はい。リピートは今でも完全に予測することはできないんですけど、リピートして布になって初めて、
「ああ、こういう風になるんだ」と新鮮な気持ちでデザインに向き合う事ができるんです。
- 青山さんのデザインのモチーフによく登場するのが植物なのですが、普段から植物をそういう目線で捉えていらっしゃるのでしょうか。
葉っぱの形とか、花びらのラインとかを。
interview_04
私のデザインって、植物と幾何学が多いんです。でもそれって遠いわけじゃない。
植物の形ってよく見ると幾何学なんですよ。枝が出てくる方向とか、顕微鏡で見たらきっとすごく美しい幾何学模様だと思います。
なんだろう…有機的、そう、植物の形の有機的な感じが好きなんです。(ラインにも)正解がないから、イマジネーションが入れやすい。
- ふんわりとした優しいお花、よりは、真っすぐで強い、草や茎の雰囲気ですね。
そうかもしれません。葉っぱとか。葉っぱは有機的なフォルムをしていますね。
使う人のことを考えてデザインしてみました。
- 今回nunocoto fabric用にデザインしていただいた6種類のテキスタイルデザインについて聞かせてください。
青山さんの、産みの親としての一番思い入れのあるデザインはどれですか? 
あ、“全部!”かもしれませんがあえて言うならば、ということで(笑)
やっぱり猫のテキスタイルですかね。猫はずっと好きだったんですけど、
以前アンディーウォーホール展に行った直後に、アンディーに触発されて猫を描いた時期がありまして。
その猫たちを今回初めてnunocoto fabricとして世に出させていただきました。ごめんなさい(笑)
- いえいえ(笑)。数年前に描きためていた猫たちが巡り巡ってnunocotoにやってきた、ということですね。
なかなか壮大なストーリーです!
結果的に、この猫の布が一番新鮮なイメージに仕上がったかなと思っています。どちらのカラーもとても好きです。
- そうですよね。デフォルメされていないリアルな猫が描かれている布ってなかなか見ないと思います。
どんな風に使っていただけるのか、私もすごく楽しみです!
- nunocoto fabricとして新しくテキスタイルのデザインを考えていただく上で、何かイメージしたものなどはありますか。
柄を小さ目に、というのは心掛けてみました。普段、私のデザインするテキスタイルって、一つ一つのモチーフが大きいんです。
でも、今回は子供服にも合わせやすいように、意識的にパーツも間隔も小さくしました。
- なるほど。スタイなんかは確かに小ぶりな柄のプリントが人気ですね。
赤ちゃんや子どもだと、使う布の面積も小さいですもんね。
そう。それはやっぱりnunocotoさんならではというか…。
私の中で、まず最初に、この布たちで何を作ってもらえるか誰が手に取るのかと考えたときに、イメージが浮かんだのは赤ちゃんです。
いつもは、あまりデザインする段階では使う対象をあえて限定しないようにしているのですが、
今回は赤ちゃんや子どもに合うようなイメージでデザインしてみました。赤ちゃんがあの花柄の布で作ったスタイをつけている所とか見たいです!
interview_03
デザインしただけでは終わらない。続きがあってこその完成。
それがテキスタイルのデザインです
- ここまで色々伺ってきましたが、一番聞きたかったことを伺ってもいいですか。
青山さんがテキスタイルデザイナーという職業を選んだ一番の理由は何でしょう。
それはつまりテキスタイルデザインの魅力、ということになるかと思いますが…
interview_05
そうですね。 一言でいうのは難しいのですが、自分で描いた柄が、イラストとかアートとかで終わらない部分、でしょうか。
布になれば、さらにそこから(作るものによって)“何か”になったときに、
アートとしてではなくデザインとして認められた気がしてすごく嬉しいですね。

自由に形を変えて、布一枚のときとはまったく違って見えるのも面白いんです。
たとえばスカートはギャザーにすることで見えない部分が出るけど、それが陰影になってきれいだったり。
紙の上に描くのとは印象がまるで違います。

- なるほど。すごくわかりやすいです。では逆にテキスタイルにデザインする上で大変な点はありますか。
さきほどとほんとに逆になるんですけど…、紙と違う、という点ですね。
紙に印刷した時点では「よし!」と思っても、布製品になったときに「あれっ?」みたいな。
見え方が違ってくるから難しいです。
でも、難しいけどこれが奥深さなのかなと思います。
- 以前テキスタイルデザインに携わっていらした、ミナペルホネンも、
図案は手描きであることにとてもこだわっているブランドですよね。
そうですね。皆川さん自身も詩人ですし、コレクションごとにテーマがあるものの、そのテーマはすごく大まかなもので。
だからその中で、デザイナーは自由な表現が求められていました。
皆川さんやミナというブランドとしての、細部までこだわって絶対に妥協をしない、という姿勢はとても勉強になりましたね。
- そのなかで青山さんご自身の感性や表現の仕方は、ずっと一貫したものだったのでしょうか。
うーん、私あまり自分のスタイル、というのは意識しないようにしているんです。これまでも、これからも。
イメージにとらわれ過ぎず、いろんな画材で描いていたいし。
ただ、あとになって(自分のデザインした布も)並べてみたときに、なんとなくタッチが似てるね、
ああこれも青山さんか、みたいな感じで、最終的にわかったぞみたいになってもらえたら面白いなって思います。

最近は、デザインの合間にご自身でもバッグや小物づくりをされているという青山さん。
ほんわかした雰囲気の中にも、たおやかさを感じさせてくれる素敵な方でした。
植物を観察するときのまっすぐな目、デザインについて語るときの静かな強さが感じられることば…。
それがそのまま青山さんの描くデザインに表れているような気がします。

猫ちゃんのテキスタイルで作った赤ちゃんのスタイ。
それはほんとにとってもキュートなものでした!(text:スタッフ小宮)

たまごスタイ:cat(イエロー・グリーン)/オーガニックコットンスムース
cato1cato3