丸ごと柚子ハニー
子どもの頃、柚子といえば冬至の日にお風呂に入れるものだった。
お湯の中でぐちゅぐちゅにつぶして、その感触を楽しんだ。
その度に強い酸味が湯気に混じって上がってきた。
柚子ってこういう匂いなんだ。
効用なんて知ったことではない。
お風呂の中に何かが入っているのがただただ面白かった。
つぶしすぎて実が湯船の中に出てしまい、両親にいい加減にしなさいと怒られたこともしばしばあった。
掃除する方は面倒臭かっただろうなぁと、自分がお風呂掃除をするようになってはたと気づく。
柚子を使った食べ物といわれても、どうしても冬至のお風呂を思い出してしまい、
なんとなく手が伸びなかった。
柚子ポン酢しかり、一六タルトしかり。
どうしてお風呂に入れるものが食べ物になっているの?
子ども心の残酷さ、
柚子を美味しいと思うには味覚がまだまだ追いつかなかった。
柚子を美味しいと思ったのは、友人たちとキャンプに行った時に作った豚汁が
きっかけだったのではなかっただろうか?
晩秋の山小屋での自炊キャンプ、食料を街で買い込み、山の中へと入っていく。
張りつまった空気、一足早い冬の匂い、鼻の奥がツンとなる。
吐く息が白くなり、手足がかじかみ、身体が芯からどんどん冷えていく。
そんな夜に作って食べた豚汁、湯気とともに香り立つ柚子の匂い。
あぁ、なんて清々しい匂いなんだろうと食欲が一気に増す。
具材の一つ一つを味わいながら食し、汁を飲み干す。
食べ終わる頃には身体はすっかり暖まり、心も一緒に満たされた。
その日、私は柚子を初めて食べ物として認識し、そして美味しい記憶が一つ増えた。
美味しい記憶は、いつも誰かとともにある。
家族とともに、愛する人とともに。
そんな記憶をこれからもたくさん塗り重ねて暮らしていきたいと思う。
丸ごと柚子ハニーのつくりかた
【材料】
ゆず 2個
蜂蜜 柚子の重量×1.5倍
【作り方】
1.柚子は4等分し、皮をむきます。わたの部分をスプーン等でこそげ落とし、細切りにします。
実は乱切りにし、種をとりましょう。
2.熱湯消毒した瓶に1を入れ、蜂蜜を注いだあと冷蔵庫に置きます。
半日経って柚子が蜂蜜に浸っていない場合は、蜂蜜を足します。
3.時々混ぜながら、冷蔵庫で保存します。蜂蜜が柔らかくなったら出来上がりです。
目安は1週間程度。お湯で割ったり、ヨーグルトに入れて楽しみましょう。
✳︎出来上がった柚子ハニーは1ヶ月を目安に使い切りましょう。