20156/5

暑さと雨とにめげそうな日には涼やかなお菓子をいただく。

暑い! 寒い!! 蒸す!!!
爽やか~な季節はあっという間に過ぎて、気付けばもう6月。
今日は真夏日、明日からは台風接近ゆえのしとしと雨降りでひんやりの予報。
そんな落ち着かないお天気が続く月だからか
家の中だけでなく体内にまで入り込んでしまいそうな湿気がどんより重い。

そんなとき、私の場合はまずお茶を一杯。
慣れない暑さにめげそうなときにはフルフルと目にも舌にもひんやりしたお菓子を、
冷えて気怠い体で頑張ったごほうびにはちゃんと甘くて口どけのよいお菓子を添えれば、
ほーっとうれしいため息と一緒に悪いものが出て行ってしまう。

この季節、フルフル系でおすすめなのが、源吉兆庵の歳々果
旬の枇杷(びわ)を使ったゼリーだ。
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源吉兆庵風に表記すると「ぜりぃ」となるこのゼリー、
包装紙を開くとなんとアルミパックに包まれている(寂しい気もするけれど、
その分日持ちするので、贈りものにできるのがよいところ)。

パックの端をハサミで切ると、まだ中身が見えないうちから
枇杷の香りがほわっと立ち上る。
お皿にのせるときは、期待に胸を膨らませながら、でも、焦らずに。
スルッと落ちてしまわないよう慎重に行えば……
宝石にたとえられるあの枇杷色が姿を現してくれるのです。きれーい!
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少し甘めだけれど、しっかりした枇杷の果肉とふるりと柔らかなゼリーのおかげで、
するするとおなかに吸い込まれてしまい、お皿はあっという間に空っぽ。

年配の方への贈りものにも人気だというのも納得の折り目正しいゼリー歳々果、
食べ終えてみれば暑さもお菓子を楽しむスパイスに思えてくる。

次にご紹介するのは、ジャン=ポール・エヴァンのマカロン
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以前、日本にマカロンブームが巻き起こったことを覚えている方、おいででしょうか?
マカロンは、セレブなパリのマダムが優雅に召し上がるのが
一番絵になると信じて疑わない私ですが、当時お菓子好きのお子ちゃまとして
カラフルで愛らしい風情のマカロンを、それはもう立て続けに頂戴したものです。
(実年齢はそれなりだったことは、今は考えずにおきたいと思います)

おしゃれ感漂う鮮やかな色、コロンと丸く愛らしい形、
あれこれ迷うのも楽しい種類の豊富さ。

世の乙女たちの心を鷲掴みにした理由はよーく分かるものの、
残念なことに、私はマカロンが苦手でございました。
いただいたマカロンはもちろんおいしくおなかにおさめましたが
どのタイプのマカロンにもときめくことができず、
ぼんやりと申し訳ない気持ちになるのが常でした。

そんな私が、初めておいしいと思ったマカロンがこの、
ジャン=ポール・エヴァンのマカロンなのです。

全体にしっとりタイプのマカロンだけれど、表面はパリッ!
しかも真ん中のガナッシュが濃厚で、おいしい!!
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私のBest3は、アメールとプラリネとミエリン。
今回は、ピスターシュインも加えて。

アメールはビターチョコレートのガナッシュが濃厚で、
プラリネはヘーゼルナッツとミルクチョコレートがやさしく甘く、
ミエリンは3種類のはちみつの甘さがたっているのに大人っぽい味。
ピスターシュインはピスタチオ入りのマカロンでかりっとしている。
シンプルに、ストレートにおいしさが伝わってくるこういうお菓子は、
どこにでもありそうで、案外ないように思う。

茶と紺の落ち着いたパッケージも麗しく、かつてマカロンの華やかさに
若干引き気味だったのが嘘のように、箱に詰めたときの彩りを考えるのも楽しいほど。

ちなみに、エヴァンのマカロンに出会ってから
「チョコレートやさんのマカロンは好き」という(限りなく個人的な)法則を発見。
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エヴァンのマカロンは、私の苦手意識に終止符を打ってくれたマカロンとして、
偉大な救世主のような地位にいるのである。

さて、最後は、東京は二子玉川のパティスリーシュクレペールのシュークリーム

雑誌「BRUTUS」の、「東京で一番おいしいスイーツ プリン部門」大賞に輝いた
バニーユ(バニラプリン)が有名なお店だけれど、今回はシュークリームをご紹介。

一見普通のかわいいシュークリーム。
粉糖愛らしい皮はさくっとした薄いタイプだ。
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でも、割ってみると……驚くばかりのカスタードクリーム!
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クリームが下に流れないことからも分かるように、
歯ごたえがしそうなくらいもちっとしているのが特徴。

おなかがいっぱいになり過ぎるのがつらいところだけれど、
温かい飲みものとひんやりとしたクリームでおなかが満たされるうちに、
いつの間にか体内の湿気なんていうものはどこかへ追い出されている気がする。

そういう意味で、このシュークリームはこの季節が1番おいしいと思うのだ。

涼やかになった心で見渡せば、
太陽に向かってぐんぐん伸びる植物たちは頼もしいし、
ぱたんぽとんと葉から葉へ落ちる雨粒の音は楽しい。
キャンドルナイトもあれば、夏越の祓(なごしのはらえ)の茅の輪くぐりもある。
田植えの終わった田んぼに吹く風をあびながら、蛍を見るというのもいいな。
暑くて寒くて蒸すだけじゃない、季節の恵みにふと気づけるのである。

皆さま、どうぞ召し上がれ。

【今回ご紹介したお菓子やさん】
・宗家 源吉兆庵 http://www.kitchoan.co.jp/site/index.html
・ジャン=ポール・エヴァン http://www.jph-japon.co.jp/
・パティスリーシュクレペール http://www.sucrepere.com/index.html

「あまいお菓子のおたのしみ -昼下がりの甘味-」の一覧

花笑う頃、思い出のお菓子を振り返ってみる。
お皿の上ではもう春、を堪能してみる。
新しい年、愛らしいお菓子とともに春を待つ。
慌ただしい師走には、一口で別世界へ行けるお菓子を選ぶ。
自然に近い滋味のあるお菓子で、秋に浸る。
職人技に感激! 多彩な栗菓子にときめく。
草花にお菓子に、繊細な秋を見つける。
涼やかなお菓子の力で、優雅に残暑を楽しむ。
夏バテ対策! おやつでココロとカラダを健康にしてみる。
若々しい新茶には伝統の小さなお干菓子を添える
春に誘われて乙女な和菓子をいただく。


◇おしらせ◇


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高橋真生(ひらがな暮らし案内所ライター、文章表現講師。 暮らしや育児・本など、人とことばを軸にした情報の発信と、自分の思いを表現する力をつけるお手伝いが主な仕事。 甘いもの好きで、やんちゃな男児にてんてこまいの新米母。 ■ブログ ひらがな暮らし案内所 http://hiraga7.exblog.jp/ ■AllAbout公式ブログ 日本のこと、日本のことば http://maitaka84.hatenablog.com/

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