20152/25

vol.4 『ペレのあたらしいふく』

このあの文庫が、とっておきの絵本を一冊ずつ紹介します。
赤ちゃんとの毎日に寄り添うような、あるだけで心がほっとするような絵本たちを、いつでも手に取れるところに置いてみませんか。

vol.4『ペレのあたらしいふく』

とつぜんですが、手づくりの服、といったらどんなものを思い浮かべますか?

赤ちゃんに作ってあげた小さなチョッキやズボン?
女の子なら夏のコットンワンピースや浴衣?
母の日にがんばって作ったギャザーエプロン?

どれも素敵ですね。
でも、この絵本の主人公、ペレのふくは、正真正銘100%の手づくりのふくなのです。

それはなんと、糸になるまえの、もわもわした羊毛の段階から自分で手に入れたふく。

もちろん自分の手だけでは無理ですよね。
周りの大人たちの手を借ります。手を貸すことで手を借ります。
ん? ちょっとややこしいですね。

ペレは大好きなこひつじの毛をかりとって、
近所の大人たちに(ときにはお母さんにも)、
「毛をすいてほしい」「いとに紡いでほしい」「糸を織ってきれにしてほしい」
などなど、順番にお願いをして回ります。

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「おばあちゃん けを すいてくれない?」
「いいとも。 かわりに はたけの花に 水をやってくれるならね」

得意な人に得意なことを、と適材適所の理が身に付いているところは、
なかなかの才覚。実は経営者向きのペレくんかもしれませんね。

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そして大人たちも、ペレを子ども扱いなんてしません。
「してあげてもいいけど、だったら代わりに○○しておくれ」
と、ちゃんと交換条件を出す。
それはいつも労働であること。ここがおもしろいなと思います。
働かないと、望みを叶えてもらえない。

今の大人たち(子どもは基本的にいつの時代も同じで、変わっていくのは大人かなと思いますが)は、
ついつい「○○できたら○○買ってあげる」という交換条件を出しがちで、
そうするとだんだん子どもたちもそれがないとやらない、なんてことになってくる。

でもそれってちょっとおかしいですよね。
はじめからすでに対等なバランスではない気がします。

お互いがしてほしいことをし合う。
そういうのが、もっとも自然で無駄がなく、
だれもが幸せになれる究極な方法なんじゃないかなと
あらためて気付かされます。

子ども向けの絵本、と思っていると足元をすくわれる、というのはこういう瞬間です。
だから絵本っておもしろいなと思います。

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赤ちゃんのお世話から、農場の手入れまで、やれることは何でもやる、ペレくん。

さて、たくさん働いたペレは、
かけがえのないものを手に入れます。

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手仕事ならではの、世界にひとつの完全オーダーメイドのふく。
ひつじくんもとっても嬉しそう!

一枚の服が仕立て上がっていく工程の勉強にもなりますが、
もっと大切なことを教えてくれる一冊ですよ。

作者はエルサ・ベスコフ。スウェーデンを代表する絵本作家です。
北欧らしく、自然をモチーフにした作品が多く、どれも淡くやさしいタッチの美しさを堪能することができます。
ファンタジックで可愛らしい作風は、今でも多くのファンを魅了しています。
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-刺繍で描く、『ペレのあたらしいふく』の世界-

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「ペレのふくがハンガーにかかっているところです。ペレのお顔がちょっと難しかったので…」

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「ひつじさんのもこもこ毛を表現するために、“ペキニーズ・ステッチ”という刺し方をしました。縫目に糸をたるませながらくるくるとすくっていく方法です。
ひつじの刺繍をするなら、このステッチで!と、決めていました。
ペレ君が毛を刈り取った後なので、もこもこしすぎないように…。」


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『ペレのあたらしいふく』(福音館書店)
エルサ・ベスコフ/さく・え
おのでらゆりこ/やく
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◇おしらせ◇


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東京・阿佐ヶ谷にある家庭文庫。2004年スタート。 子どもと大人が本を通じて楽しい時間を共有できる、そんな場所を目指しています。名前の由来は、“このよろこびをあのこに”。 毎週土曜日の午後1時〜5時まで開館中。 「このあの文庫」http://konoano.tumblr.com/

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