小さな仕立て屋さん、 m+(エムプラス)のカナザワ マイさんインタビュー



仕立て屋さん、という響き。なんだかいいなあと思うんです。
一枚の布を洋服に。形を変えてお届けする。そういうお仕事です。

お気に入りの布があって、いつか何か作るんだー! と思っていても、
その‘いつか’がなかなか来ないまま、クローゼットの奥に畳まれてワンシーズンが過ぎちゃった…。そんな経験ありませんか。

もちろん、自分で作る楽しみをずっと先までとっておくことも素敵ですが、
仕立て屋さんに相談してみるというのもひとつの手です。好きな布を好きな形にしてくれるプロですから。
この人に頼んでみたい!と思えるセンスの良い仕立て屋さんに出会えたら、それはとてもラッキーなこと♪

さて今回は、そんな仕立て屋さんのご紹介です。
2005年よりウェブ上でのオーダー受付という形で展開している、m+(エムプラス)のカナザワ マイさん。
宣伝・製作・納品まで全てお一人でこなすという、まさに‘小さな仕立て屋さん’。

口コミでじわじわと人気が高まり、今ではハンドメイド好きさんだけでなく、おしゃれなママの間でも注目を集める方です。

そんなカナザワさんのご自宅兼アトリエへお邪魔して、インタビューさせていただきましたよ。


自分のペースでできること、好きなことを仕事にするということ。


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トレードマークの(?)お手製のヘアバンド姿のカナザワさん。
ちなみにソファカバーもクッションカバーも手づくり♪



―― カナザワさんが「m+(エムプラス)」として仕立て屋さんを始められたきっかけは何だったのでしょうか

「長女の出産を機にそれまで働いていたスペースデザインの会社を辞めていたので、これからどうしようかなと思ったときに、やっぱり何かしら仕事はしていたいと思ったんですよね。長女がすごく手のかからない子だったというのもあって(笑)。それでふと自分が何をやりたいかなと考えてみたら、小さいころから身近だった洋裁をやろう、と。自然にそういう選択になりました」

―― お母さんもよく手作りをされていらっしゃったのですか

「手づくりというか、母の実家が縫製会社でした。母もそこに勤めていて、私は小さいころほとんど敷地内にある祖母の家で過ごしていました。手芸好きになったのは その祖母の影響が大きいですね。なんでも作るパーフェクトな祖母でした。そんな環境だったから、布が洋服になっていく一連の流れというか、そういうのが感覚として身に付いていたような気はします」

―― なるほど。それでご自身でm+をスタートされたのですね。ウェブでオーダー受付をしてメールでやり取りという、今の形ははじめから決めていたのですか

「そうですね、今は不定期で受注会もしていますが、基本的にはウェブだけでと思っていました。もともと人の多いところが苦手で…(笑)。普段も住んでる駅からあまり出ないし。布を仕入れるのもウェブサイトからが多いです。できるだけ家の中で完結するのが合っているのかなって」

―― 特に女性は出産を機に自宅でできることをお仕事にする方が増えていると思いますが、やっぱりその方が楽、という実感はありますか

「いえいえ、全然楽じゃないですよー。スローワークっていう言葉が流行ってますが、あれみんな、ほんとは全然スローじゃないんじゃないかな、たぶん(笑)。でも仕事に充てる時間を自分でコントロールできるというのはとても大きいです。ほんとに。私の場合、あんまり境界線は設けてないというか、とにかく布が好きで縫うことが好きなので、空いた時間はつい仕事してしまいますね。仕事じゃなくても、もうとにかく縫ってます。最近は、さすがに夜中は控えてますが、休日でも自然と身体がミシンに向かってしまって…」

―― いつでも仕事モードになってしまう、というのもお家仕事ならではの悩みですね。普段、どんな風にお仕事モードへ切り替えされてますか。スイッチみたいなものとか…

「特にないんですけど、音楽というかラジオを聴きながら製作するのがお気に入りです。スイスイはかどりますね。あとは切り替え、じゃないですけど、視界に入る場所にグリーンを置くようにしています。ずっとミシンに向かってるから、目を休ませるという意味もあって。ふと手を休めてグリーンを眺める時間がリラックスタイムです」

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ヒヤシンスやアイビーなど、季節を感じるグリーンやお花が気持ちよく飾られているアトリエの窓辺。

気になるアトリエも見せていただきました!

おじゃましまーす。

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明るいアトリエ。こちらに引っ越したときから、この部屋をアトリエとして使おうと思っていたそう。

入ってすぐ、お!と目にとまったのが、壁に貼られたご家族の写真と、…ひも?布端?のようなものでした。

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「これ、布の耳ですね。布の端っこの部分の、普通使わないで切り取っちゃうところ。耳だけど布は布なので、可愛い布の耳は捨てられなくて。結構便利なんですよ。ちょっとしたものをまとめて縛ったり。オーダーが仕上がったものをこれでラッピング紐代わりに使うこともあります。これが結構かわいいんですよ~。」

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―― ミシンはこちらの2台を使われているのですね。どちらもJUKIです

「そうですね。JUKIのロックミシンと職業用ミシンです。どうしてJUKIか、というと、こだわりがあってというわけではないのですが、実家の工場でよくJUKIを見かけていて。なので何となく?JUKIを選びました。でもほとんど故障もなく良き相棒になってくれていますよ」

自分と向き合って、作れる分だけを誠実に引き受ける

このアトリエで、毎月のオーダー分を製作されているカナザワさん。
オーダー受付のスタートや締切は、ブログで告知されます。

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仕上がり商品の撮影も、ブログにアップ作業するのもすべてカナザワさん自身。大きなディスプレイのMACを愛用中。

―― ちなみに、オーダー受付点数は毎月決まっていらっしゃるのですか

「いえ、実は決まっていないんです。その時のオーダー製作以外の仕事の配分とうまく調整しながら、できるな、っていうところまで受注させていただいています。月初めにオーダー受付して、基本的には早いもの順で。あとはその内容を見ながら自分でその月の製作点数を決めています。極端に早く締め切る、ということはありませんが、ワークショップがあったりする月は、多少(製作は)抑え目になるかな、という感じです」

―― ワークショップでカナザワさんのファンになって、改めてm+へオーダーするという方も多そうですね!

「そうですね。ありがたいことにそういう方は多くいらっしゃいます。最近はお子さま連れでワークショップへ参加くださる方も増えていて、そこからお子様とおそろいの服をオーダーしてくださったり。でもやっぱりご自身(お母さん)の服のオーダーが多いですね。8割ぐらいがお母さん用(大人用)です。お母さんが、自分へのご褒美的に服をオーダーする。そういうのは私もとっても嬉しいです!」

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―― たしかに子ども用にはお母さんが作ってあげられるけど、お母さんに作ってくれる人はいないですもんね。やっと作って完成したら失敗してた、、とか悲しいですし

「子ども服も好きですが、大人の服作りは楽しいですよ。デザインパターンのバリエーションは多くはないけれど、どれも本当に気に入っています」



自分の中の定番を生み出して、作り続けること。

―― m+としても10年目ということですが、今はタックワンピースやドロップショルダーワンピース、ローブコートなど、定番になっているアイテムが多いですね。今後、新しいラインナップは増えていく予定でしょうか

「うーん、そんなに増やすつもりはないんです。基本は変えたくないし、ベーシックで良いものを丁寧に作り続けていきたいと思っています。同じパターンでも、使う布によって本当に印象が違っておもしろい。そこがオーダーメイドの醍醐味だと思うので。オーダーを受けてお客様の大切にしていた布をお預かりすることは、わたしにとっても、いろんな布に出会うための良い機会になっているんですよ」

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―― そうですね。同じパターンでも質感やプリントによって、まるで違うアイテムにも見えてきますよね

「一枚の布が形になっていく過程の楽しさは、何とも言えません。私は仕立て屋ですが、ワークショップなどで、‘布というものを形あるものに変えていくことの楽しさ’を、たくさんの人と共有できたらいいなと、そんな風に思っています」

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“いってらっしゃい♪”の言葉と共にお届け

子どものころから布に囲まれて育ち、ご自身もお母さんになってふたたび布に囲まれる生活へ。
気負いなく、自分に正直に、今日も縫い仕事に励むカナザワさん。

これからも、相棒のミシン2台と共に、仕上がったばかりのお洋服とワクワクをお客様の元へお届けする日々が続いていきそうです。

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【おまけ】

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子ども向けワークショップで使うパーツ。パーツ自体も子どもたちに作ってもらうことも。


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ヘアバンド作りのワークショップは毎回大人気!

おしゃれなヘアバンドは、出産の入院中にお友だちが来てくれたりしたときなんかにささっとヘアスタイルの乱れが隠せて便利ですよね。
もちろんその後も使えますし。素材や柄を変えていくつか作っておけばコーディネートに合わせて替えられますね。
カナザワさんはこれまで約50個のヘアバンドを作っているそう!



【m+(エムプラス)のオーダーの流れ】
1)ブログやFacebookで月初めにオーダー受付の告知
2)オーダーしたい旨をカナザワさんへメール(またはブログのコメント欄)
※その際、「オーダーしたいアイテム」「生地の持ち込みの有無」「大体のサイズ感」「好きな色味や雰囲気」などをお伝えいただくとスムーズです
3)メールでやり取りしてディティールを決定
4)製作(2~3ヶ月程度)
5)仕上がったことをメール連絡後、発送。→お手元に届きます!

オーダー料金等の質問はお気軽にどうぞ♪


関連URL
m+(エムプラス)http://m-plus2005.com/

…近々、カナザワさんの登場するコンテンツもアップします。お楽しみに!



◇おしらせ◇


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nunocotoスタッフ。編集・コンテンツ系を主に担当。2人の男児の母。手づくりするのはだいたい真夜中。I-padを相棒に、昔のドラマや映画を観ながらチクチクするのが好きです。新聞配達のバイクの音で我に返ることもしばしば…。でも作っている間は不思議と眠くならないんですよね。

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