20153/3

vol.6 生活を彩り記憶する

雑貨屋さんに行く。
かわいいものを見つける。
もう20年近く繰り返してきたお楽しみ。

そうやって見つけた好きなものは大事にするので長く使えます。
長いものは母が見つけて日々の生活で使っていたのを引き継いで30年以上現役です。
そうすると、そうそう新しいものも機能って必要なかったりして。
たくさんの経験を積むうちに、ただ可愛いものには反応しなくなってしまいました。
無我夢中で手に取ってレジに直行したりなんてめったにしない。
それでも日々、出会いがあります。

不揃いな錆びやすいスプーン。
ホテルのレストランででも使いそうな揃いのサーバースプーン。
ブラックコーヒー派のシュガートング。
給食のスプーン入れ。

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たくさんの料理本。
アルマイトのお弁当箱。

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役に立つか?
お前は何の役に立つのか?
と、つい問いかけてしまう。
役に立つのなら目の前の可愛い子を連れて帰る方便にもなるし、なんて。

小さじつきの薬味のつぼ。
一目惚れして使いすぎて割ってしまいつぎはぎで使う作者不明の陶器の器。

買い集めてしまっておいた手ぬぐいはあるとき一気におろして水回りで使い倒すことにした。
吸水もたよりなく、すぐにびしょびしょになっちゃうかわいい薄い布。敷いて、絞って、掴んで、拭いて。
繰り返し繰り返し。

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日常に役立つものしかなかったら、それはとても快適で美しい生活かもしれない。

無駄なものばかり集めて広げてただ眺めるだけのことに、いつからか時間を使わなくなってしまった。

確かに日常で働く人も物も美しい。
だけどそれだけでは息苦しいんじゃないか。

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少し磁気が弱くてたいしたものを留められないビールの王冠で作ったマグネット。
可愛すぎて使うシチュエーションが思いつかないエプロン。
三日月型が可愛いけどひっかけられないから置き場すら悩むような栓抜き。
友達が作って送ってくれて、かわいくて使うのが勿体ないと思いつつ、別の友達にロゴを刺繍してもらって大事に使っている鍋敷き。
思い出を保持してるからより愛しい雑貨たち。

それらはバリバリ働く道具たちの脇で、言い訳のように与えられた役目をスネもせず、ささやかながらしっかり果たしてくれている。
役に立つよりも、視界に入る幸せが勝るくらいにささやかに。

そういう子たちの居場所を許してあげるくらいには肩の力を抜いていいのかもしれません。

今までご紹介した道具でも、それ以外でも、登場させるタイミングが計りきれなくて、買ってから平気で半年、一年と寝かせているものもありました。
余裕のあるタイミングも、ない時も、あって当然。
それでも一目惚れした道具や器は買っちゃった方がいいと思います。
あるとき思い当たってうふふと出した真夜中のアイスクリームカップの可愛さ、木のお盆に直接載せたトーストの可愛らしさと湿気を吸ってくれる実用面。
何を持とうかな、何を手放そうかな、何を作ろうかな。
道具を広げて手入れをしながらお取っときが舞台に立つ日を想像したり。

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小さい頃から、台所の風景を描く歌が好きでした。
古くは荒井由実さんのチャイニーズスープや、BONNIE PINKのヘブンズキッチン、ハナレグミの家族の風景。
そんな歌を口ずさみつつ。

何気なく日々使われる道具たちによって作られる食事が、あなたと家族の明日の体温を作ります。
どうぞ、あなたとあなたの家族のために、台所を楽しんで下さい。

「注文の多い道具たち」の一覧

vol.5 木べら
vol.4 飲み物道具の話
vol.3 パキスタンから来た皿
vol.2 アルミのバット
vol.1 鉄のフライパン


◇おしらせ◇


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1981年東京生まれ。2009年より旅するカレー屋スプンフルの屋号でカレー専門ケータリングを開始。老若男女楽しめる南インド風のカレーを、ライブ、イベント会場、撮影現場などで作る。2012年9月より新宿ゴールデン街無銘喫茶にて毎週火曜日のバー営業スタート(2014年9月まで)。11月から新天地にて絶賛奮闘中。

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